この公園には他にも様々な記念碑が並べられているが、それらは今回脇に置いておいて、問題はこの案内板に書かれている内容だ。
松姫湖の奥を見ると「トロッコ軌道跡」の表記がある。
この軌道は土室森林軌道という昭和40年代に廃止された県営林道のものだ。
案内板には他にも「昭和30年代の木材搬出風景」と題して写真も添えられていた。
写真には5両の貨車が写っており、わりと高頻度で運転されていたようである。
動力源は確認できないが、人力ないし牛力であったという。険峻な地形のため、速度の出る馬は導入されなかった(下り勾配といえども、さすがに無人での惰性走行はしなかったであろう)。
08:05
現在地:山梨県大月市七保町瀬戸
現在私は葛野川ダムのさらに先、鶴寝トンネルを抜けた先のシンケイタキ沢から松姫湖を眺めている。
この周辺の軌道跡は湖の奥深くに沈んでおり、ここからその姿を見ることはできない。
続いて山口トンネルを抜けた先の山口沢。
恐らくこの沢を降りていけば、軌道跡が見つかるかもしれないが、確証が得られないのでここはスルーする。
そして自良沢。例の案内板に軌道跡の表記があるのもここからだが、やはり軌道跡は視認できないためスルーする。
よく見ると木々が薄い部分があり、それが軌道跡なのだと分かるのだが、初見で気づくことはできなかった。
しかし、気づいたとしても自良沢から軌道跡に取り付くのは困難だっただろう(後述)。
現在地:山梨県大月市七保町瀬戸
どこか降りれそうな所は無いか、途中、鹿に遭遇しつつ進むこと6分。下に降りる階段を見つけた。
どうやら東京電力の巡視通路のようで(葛野川ダムは東京電力の水力発電所の一部)、入口にある看板に書かれている内容を要約すると「関係者以外使わないでね。使う場合は自己責任で使ってね。」ということだった。
これがまさしく軌道の跡であろう。
なお、さらに下まで階段が続いているが、行き着く先はダム関連施設だった。
語彙が少なくお恥ずかしい限りだが、いかにも森林鉄道という感じだ。
自良沢を挟んでレールが対岸に続いているが、ここを直接降りて登るのは難しそうだ。撤収。
左上に土室日川林道のヒロヨシ沢橋が見えるように軌道は意外と林道の真下に近いところを通っていた。
結局、自良沢以東の調査は見送り、巡視通路より西へ進むことにした。
画像の場面は巡視通路より100m程進んだところで、橋自体は既に落ちているものの、見事な石積み橋台が残っている。
しかし、こういった地形では迂回が面倒なのもまた事実である。
橋が架かっていたのか路盤が流出したのか微妙なところだが、レールがむき出しになっている。
沢の上流方面にもレールが転がっていたが、支線でもあったのだろうか。とてもそんな地形には見えないが。
なかなかにきついカーブはナローゲージならでは。
余談だが巡視通路入口より西側の林道は廃道状態であった。
桟橋が架かっていたようだが、大部分が落橋済み。
現在地:山梨県大月市七保町瀬戸
安平沢に到着した。ここにも橋台が残る。
引きの写真が無いが、右方向に引き続き線路が続いており、新旧線の存在を思わせる。
実際はここから南西にある大沢まで500mほど残っていたようである。
安平沢以西や自良沢以東については気が向いたら再訪するかもしれない。
ここまでの評として、崩落や寸断が随所に存在するため、全線を辿ろうとするとそれなりの時間が必要になる。
一方、路盤自体はよく残っており、ところどころレールや橋梁も残存しているので付近を通りがかった際は立ち寄ってみるのも良いかもしれない。
(完結)
参考資料
鉄道ホビダス・追憶の土室森林軌道。http://rail.hobidas.com/blog/natori09/sp/archives/2007/05/post_523.html
三才ムック「廃線跡の記録 2」・平沼義之 他(著)
変更履歴
2017.7.19 公開2019.3.10 移転に伴う改訂
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