東京都道201号十里木御嶽停車場線(前編)

【前編】【後編】

前説


本編の前に登山都道とは何かを簡単に説明する。
公道(道路法上の道路で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道)の中には何らかの理由で山間部に主として徒歩道(幅1.5メートル未満の道路。所謂、点線道)として地形図等に描かれる道がある。これが所謂、登山国道や登山県道と言われる道である。と私は認識している。

これらの道の見た目はまさに一般に想像する登山道そのもので、当然、自動車交通不能区間(最大積載量四トンの貨物自動車が通行することができない区間)であり、場所によっては歩行者同士の離合も困難なこともある。

すなわち「登山都道」とは、都道かつ徒歩道のうち登山道となっている道に与えられる大変名誉(?)な称号なのである。

こうした徒歩道(や予備軍として軽車道)は道路現況調書などにおいて「未改良区間」として計上されるわけだが、時代が下るにつれ、長大トンネルを掘るなどして自動車が通行可能なバイパスが整備され、姿を減らしつつある。

私の手元には「東京都道路現況調書(平成28年度)」という資料があり(都庁で700円ぐらいで買える)、これを見ると路線別の延長が1m単位で記載されているものの、交通不能区間の延長は残念ながら記載されていない(市町村別で記載されている)。
結局のところ、路線中どこからどこまでが交通不能区間なのか分からないため、本稿では「4t貨物車が通行出来なさそうな道」を交通不能区間と定義し、その距離については地理院地図にて水平距離を測ることにした。

そのような中、都内(島嶼部除く)には以下に示す4路線に「登山都道」が今なお存在する。
なお、都道206号川野上川乗線は奥多摩周遊道路というバイパス道路的な存在があるので除外した。
  • 都道184号奥多摩あきる野線
  • 都道201号十里木御嶽停車場線
  • 都道202号上成木川井線
  • 都道205号水根本宿線

今回はそのうちのひとつ、都道201号十里木御嶽停車場線を紹介する。


本編


東京都道201号十里木御嶽停車場線は、あきる野市戸倉の十里木交差点と東京都青梅市御岳本町のJR御嶽駅を結ぶ全長15.539kmの一般都道である。主要な経由地として御岳山が挙げられるが、御岳山前後の約6.5kmが交通不能区間となっており、御岳山の南側は実質徒歩道、北側については車道が存在するものの指定車両除く車両通行止となっている。

調査は2回に分けて行われたが、本稿では起点から終点方面へ紹介していく。


調査日:2016.4.16

7:24
現在地:東京都あきる野市戸倉
上の画像は都道201号起点手前の都道33号にある青看。
今回調査する都道201号は、交通不能区間手前の養沢が行き先として案内されている。
余談だが、「山のふるさと村」という著名地点への案内標識が併せて付けられており、39km先という都内らしからぬ距離を示している。これは青看を除けば、都内では最長級なのではないだろうか。ベスト1をご存知の方がいらしたら、ぜひ教えていただきたい(現在、武蔵五日市駅前の都道7号で「山のふるさと村」42kmを確認している)。

その下の画像は青看から20mほど進んだところの交差点を写したもので、青看のとおり右折したところから都道201号が始まる。

ところで、都道201号の路線名に含まれるとともに都道33号との分岐点にもなっている「十里木(じゅうりぎ)」。そこから都道33号を西へ少し進むと「追分(おいわけ)」という小字があり、バス停の名にもなっている。
「追分」というのは、道が別れる場所に付けられるある種、汎用的な名前なのだが、地図を見ても分岐らしい分岐は見当たらない。言うなれば、十里木の場所に追分の名がある方が自然なのである。
この違和感を解くため、「五日市町の古道と地名(発行 五日市町教育委員会)」という本を開くと結構なボリュームで解説がされていた。

引用し始めるときりがないので要約すると、
  • かつて追分の地には、古甲州道(鞘口峠、大菩薩峠を経て甲州に至る道)と御岳道(御岳山へ至る道)の分岐が存在し、甲州道は言わずもがな御岳道も修験行者や山伏往来に利用されるなど双方共に格式の高い道であったゆえに、「追分」の名が付けられた。
  • しかし、大正時代に御岳新道(現在の都道201号落合付近)が開通すると、交通の要所が十里木へと移っていった。
というようにまとめられる。

十里木については、「どこかから十里のところにある木」というのが真っ先に思いつくが、めぼしい基準点がなく近隣に関連する地名(例えば「七里木」)もないことから、そういう由来では無いようで、前述の書には、
  • 川の轟きに由来する「トドロキ」の当て字「十十六木」から変化した「十十里木」を省略化した「十里木」説
  • 焼畑や休耕地を意味する「ソリ」の当て字「十里」と集落を意味する「城」が簡略化された「木」が組み合わさり、それを音読みした「十里木」説
の2説が書かれている。
後者については更に十里木に隣接する乙津地区に「曾里郷(そりごう)」という地名があり、この2つの地名は同じ由来なのではないかと述べられている(「曾里」は当て字、「郷」は集落の意)。
個人的には、現地が秋川と養沢川の合流点になっていることもあり、「川の轟き」説を支持したいが、「焼畑周辺の集落」説も十分な説得力を持っている。昔の人の発想力に感服するとともに、地名の奥深さに魅了されつつある私がいる。

初っ端から長くなってしまったが本編に戻る。

13:47
現在地:東京都あきる野市養沢
時折1車線になるが、基本2車線で進む。
時間がやたら進んでいるのは檜原村の猿江集落まで行っていたためであり、実際のところ十里木からここまで自転車で15分程度である。
ここの分岐、地理院地図ではどちらの道も都道として描かれている。今回は旧道と思われる右の道を進む。

民家は旧道沿いに集中しており、道と石垣と植物が絶妙なバランスで合わさっていて良い雰囲気だ。

旧道に架かる養沢川を渡る橋は西野橋といい、昭和10年の竣工。

起点から6.1km。道も完全に1車線となった。

起点からの距離が7.4kmを超え、養沢鍾乳洞・日の出山方面への登山道を右に見送ると、都道は砂利道に変わり、いよいよ険道らしくなってくる。

どこかで見たことのあるような景色だが、林道(林道鍾乳洞沢線)が新たに造られている。
平成21年度施工の延長211mと現地にあるが、どう見てもそれ以上ある。

現在地:東京都あきる野市養沢
カーブを曲がると道路情報が掲示されている。
「がけ崩れ」「この林道は行き止まりです」と東京都森林事務所が言っているが(西多摩建設事務所名ならテンションも上がるのだが…)、地形図を見る限り御岳山南麓の「七代の滝」までは車道が続いているらしく(最後は長い階段になっているらしい)、この道を進んでも都道も目指す御岳山へは行けるようだ。
しかし、私が進むべき都道はここを右折する。

右を向く。…空気がどよ~んとしていた。
大体すぐ隣に整備された林道があるのにわざわざこんな所登る奴がいるのかと。

朽ち果て気味の階段を登るとその先にも一応通路があるが、完全に右を走る林道が都道を追い出しにかかっている。

通路を抜けるとコンクリート舗装の林道と合流する。
林道の分岐があり、すぐそこで行き止まりとなっている道のほか、更に上へ登っていく道もある。
ちなみに2017年4月現在の地理院地図では、この林道が都道色に塗られているが、区域変更等根拠があってのものなのかは不明。
このような場所の場合、林道敷とは別に都道敷が存在すると聞くが、例えば、左の雑草地帯が実は都道敷だったりするのだろうか。

14:32
完全な登山道になるとすぐに木橋で沢を渡る。
ここから25段にも及ぶ九十九折で尾根を目指す。

路肩は作業用通路でよく見る丸太を寝かせる施工がされており歩きやすい。

〜九十九折真っ只中〜
山を生き場所にする漢達ならまっすぐ登っていくのかもしれないが、私は通路に従うしかない。

九十九折終盤になると木の根と木製の階段で歩き難くなる。こういった手製の階段は歩幅が合わないことが多く、ペースが乱されるので好きではない(作られた方、申し訳ない。感謝はしています)。

15:30
ひときしり登ったところで小休憩をとることにした。
こういう岩には名前が付いていそう。

進軍を再開し、しばらく歩いてから右上を見上げると石垣が目に入る。
何を隠そう都道184号奥多摩あきる野線の擁壁である。

15:50
現在地:東京都青梅市御岳二丁目
坂を登りきり、鳥居が現れると同時に都道184号と合流する。
画像は都道184号上から撮影したもので、左に降りていく道が都道201号養沢方面、背後へ続く道が都道184号大久野方面、そして鳥居の奥へ続く道が両線の重複区間であり御岳山方面である(青線は起点から終点に向けて引かれている)。

尾根は割と広く、畑なども広がっている。

コンクリート舗装が現れる。山道から舗装路になると帰ってきた気になる(どこに?)。

左の道は宿坊へのアクセス路で、私が登ってきた都道は右の道である。都道ェ…

仕上げに急坂を登るといよいよ宿場町の中心部に入るのだが、地理院地図では坂を登る前に右折する道が都道色に塗られている。この道は巻道として有効利用すると良い。
折角なので今回は直進するが、この坂、水平距離40mの間に標高を8m稼ぐので単純計算で20%を超える勾配となっている。

登りきったその先にも急坂が続いており、何故か街灯に都道201号の管理ステッカーが張ってある。どうなってるんだ…

16:15
そして、裏路地を進むと表参道に突き当たり、そこを左折すると武蔵御嶽神社に到着する。


次回は御岳山から御嶽駅へ至る区間を紹介する予定。


(後編へ)

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