後編は吹上隧道の北口から始めよう。
昭和28年竣工、延長245m、幅員6.0m、限界高3.8m
10:53現在地:東京都青梅市成木八丁目
どっしりとしたポータルである。
少々の飾りっ気があるが、前編冒頭に記載したように戦前ではなく戦後、昭和33年生まれ(ただし、国土交通省の平成16年度道路施設現況調査には昭和28年の記載とある)の隧道である。当時はまだ戦前の精神が残っていたのだろうか。
隧道内部はコンクリート巻立てで照明が現役で点灯していた。
照明が道路進行方向に対して平行ではなく垂直に設置されているのが珍しいだろうか。鉄道ファン的には枕木方向という呼称がしっくりくる。
また、覆工のための型枠の跡がくっきりと残っており、楽しませてくれる。
隧道を抜けて振り返る。
ポータル形状は北口と同じである。若干、南口の方が明るくスッキリしているだろうか。
緩い下り坂を150m程進んでいくと、旧道が呑み込まれるかたちで現道に合流する。
合流地点から振り返ると平成の新吹上トンネルと昭和の吹上隧道が並んで見える。
ネタバレになるが吹上隧道の上に見える平場が旧旧道である。
また、前編冒頭のコラムにも書いてあったように、新吹上トンネルは青梅側から成木側へ5%の下り片勾配となっている。
自転車で成木側から進入すると(当たり前だが)上り勾配となるので、漕いでもなかなか出口にたどり着けない辛い隧道となる。
さて、現道を青梅方面へ280m程進むと都営バスの黒沢バス停から脇に入っていく小道がある。この道が旧旧道である。
上り坂を登っていくこと400m。一軒の住宅が現れた先にゲートがある。
ゲートを越えると道は非舗装となり左へカーブしていく。
その際、左眼下に吹上隧道を見下ろすかたちとなる。
吹上隧道直上から青梅方を望む。
左のお宅の高さに旧旧道、眼下に旧道、正面奥に現道を見ることができる。
11:13
現在地:東京都青梅市黒沢二丁目
廃小屋の横を通り過ぎ右にカーブしていくと次第に地形が狭まっていき、旧吹上隧道の南口にたどり着く。
人が通らなくなった道は必然と荒れていくというが、坑口前は竹がなぎ倒しになっていたり、雑草が茂っていたりと閉鎖前の写真と比較すると似つかない状況になっている。
北口と異なる点は、こちらのトンネルポータルは比較的良く残っていること、同じく鉄板で閉鎖されているものの申し訳程度に扉が付いていることである(その扉も溶接されているように見えたが……)。
笠石と帯石も残っているし、
要石をはじめとしたアーチ環も綺麗に残っている。
惜しむは隧道内部を見れないということだ。
ここから北東に5km行ったところに同年代の隧道、畑隧道があるが、そちらは現在も通り抜けができるだけに尚惜しい。
少しでも隧道の全景を写すために色々位置を変えながら撮影していると、
んあ?
……
誰が何のためにこのようなことをしたのか理解できない(箒を逆さまに置く類だろうか?)。廃隧道なんかよりもこっちの方が何倍も不気味で気持ち悪い。
そんな後味の悪さを感じながらもこの地を後にした。
(完結)
参考資料
広報おうめ(平成15年6月1日号)市長コラム「先憂後楽18 吹上峠」http://www.city.ome.tokyo.jp/archive/2003/20030601/column.htm[リンク切れ]
日本全国トンネルリスト(東京都)
http://www.tunnelweb.jp/list/list.html
変更履歴
2017.10.11 公開2019.6.23 移転に伴う改訂
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